子宮頸部異形成について
子宮頸部異形成には軽度(CIN1)・中等度(CIN2)・高度(CIN3)と三段階があります。
子宮頸部軽度~中等度異形成(CIN1~2)の場合、一般的には定期健診をおすすめしています。
子宮頸部高度異形成(CIN3)の場合は、子宮頸がんの一歩手前の状態であり、10~20%程度が子宮頸がんに移行するといわれているため、手術をご提案させていただきます。
子宮頸部異形成で症状が出ることはほとんどありませんが、不正出血や性交後出血で見つかることもあります。
そのような症状のある患者さまには、子宮頸部細胞診検査(子宮頸がん検診)を受けていただくようにおすすめしています。
診断に用いる検査
子宮頸部異形成の診断は、健康診断などの子宮頸部細胞診(子宮頸がん検診)で異常を指摘されることからはじまります。
追加の検査として、子宮頸部組織診、コルポスコピー検査、必要に応じてHPV検査(ヒトパピローマウイルス)を行います。
子宮頸部組織診で軽度(CIN1)~高度(CIN3)の異形成やそれ以上の浸潤がんの確定診断をします。
治療法の実際
子宮頸部高度異形成(CIN3)以上の患者さまには手術をおすすめしています。手術の方法は、子宮を温存する子宮頸部円錐切除術と将来的な再発リスクをなくす子宮全摘術の2つあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
子宮頸部円錐切除術
- 子宮を温存
- 経腟的腹腔鏡手術
麻酔がかかった状態で膣から子宮の出口(頸部)を薄く切り取る手術のことです。
昔は、子宮の奥深くまで円錐状に切り取っていましたが、現在は病変をきっちり取り除きながら、できる限り子宮頸部を薄く切り取るようにしております。
術後の経過観察や再発について
子宮頸部を薄く削るのみで、子宮を温存できることが何よりのメリットですが、子宮頸部異形成が再発する可能性があり、術後も定期検診が必要になります。
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術後の生活について
術後出血に関して 電気メスで子宮の出口を切除した直後は、やけどをした状態となり、かさぶたが形成されます。
やけどをした部分からは体の中の組織液がでるため、水っぽいおりものが1~2週間程度続きます。切除部位が治癒するまでは、茶色のおりものとなることが多いです。
かさぶたが剥がれた時には稀に出血することがあります。今までの月経の2倍を超えるような出血がある場合は、一度ご連絡ください。
術後2週間程度は、激しい運動や腹筋運動、長風呂など血圧が上がる行為はお控えください。月経に関して 術後の不正出血もあるため、月経かどうかの判断が難しいこともあります。
今までの月経の2倍を超えるような出血がある時などは、一度ご連絡ください。
また、子宮の出口を手術したため、出口が狭くなり、月経が長引いたり、月経痛が強くなったりすることが稀にあります。性生活に関して 1ヶ月以上は避けてください。その上で出血が落ち着いたら性生活は可能です。
妊活は、月経がきてから術後の外来を受診して、摘出した子宮頸部の病理結果を確認してからとなります。分娩に関して 手術後は経腟分娩が可能です。分娩する施設には、子宮頚部円錐切除術を受けたことをお伝えください。
分娩施設が当院での施術状況を希望された時には、紹介状を発行します。
子宮頸部円錐切除術後は、流早産の危険性が若干高まる傾向にあります。
腟式腹腔鏡下子宮全摘術(vNOTES)
- 子宮を摘出
- 経腟的腹腔鏡手術
お腹にきずのできない腹腔鏡手術です。
腟から腹腔鏡や器具を挿入し、摘出する子宮も膣から取り出すため、術後の痛みは少なく、早期の社会復帰を可能とします。
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子宮全摘術(vNOTES)後の日常生活について
術後の出血について 子宮摘出後は、膣の一番奥にある膣断端を数ヶ月で溶ける糸で縫合します。創部が落ち着くまでは、おりものシートで足りるくらいの少量の出血が1~2ヶ月続くこともあります。生理用ナプキンを高頻度で取り替えるほどの出血がある場合はご相談ください。 腹圧に関して 膣の奥の縫合部は数ヶ月かけて治癒します。
強い負荷のかかる運動や重いものを何度も持ち上げるような腹圧をかける行為は1ヶ月程度自粛していただき、少しずつ負荷をかけるようにしてください。
また、腹圧をかけた時に出血がみられるようであれば、無理をしないようにしてください。性生活について 膣の奥の傷が治りきるまでに3ヶ月ほど要しますので、それまでは避けてください。その後は術前と変わらない性生活が可能です。 卵巣温存について 卵巣を温存した方は50歳前後まで排卵があり、女性ホルモンも分泌されます。
卵子は約0.1mm程度であり、お腹の中に落ちた後、半日程度で溶けて吸収されてしまいます。
女性ホルモンは子宮全摘しても分泌されるので、急に更年期障害になることはありません。
排卵後に胸が張る、むくむといった症状が出ていた方は術後も同じ症状が出ます。
排卵痛も起きることがありますが、一般的には1日以内で落ち着きます。
術前より月経前症候群があって困っていた方は担当医にご相談ください。
また、術前に偽閉経療法を行った方は、その薬を使用してから数ヶ月以内に卵巣機能が戻ってきます。更年期、閉経について 更年期は全ての女性に訪れるものです。その更年期特有の症状がつらくて困る状況のことを更年期障害といいます。
子宮全摘後は月経がなくなるため、更年期になったのかは分かりづらいです。
更年期障害を疑って困った時にはホルモン検査(血液検査)で確認できますので、婦人科にてご相談ください。その際に子宮全摘をし、卵巣温存をしていることをお伝えください。
また、更年期障害の時にはホルモン補充療法を行うことが可能ですが、子宮のある方は子宮体がんを予防するために2種類のホルモンを使用します。
子宮全摘後は1種類のホルモンで十分ですので、ホルモン補充療法はやりやすくなります。がん検診について 子宮全摘後は子宮頸がん、子宮体がんにはならないため、子宮がん検診は不要となります。
卵巣がんに関しては、卵巣がん検診効果が乏しいといわれているため、検診はおすすめしておりません。
卵巣がんは子宮の有無に関わらず発見しにくい病気であり、多くは腹部膨満感や下腹部痛などの自覚症状があって見つかります。
子宮全摘時には同時に卵管を予防的に切除しています。卵管は一部の卵巣がんの原因となっているため、卵管切除で卵巣がんとなるリスクは減少しています。婦人科受診について 術後は、1ヶ月、3ヶ月の診察が終了すると、定期的な婦人科受診がかなり減ります。
ただし、更年期の症状やおりもの、かゆみなどは子宮全摘後も起こり得るので、そういった時には婦人科を受診してください。
また、子宮頸部高度異形成~子宮頸部上皮内がんで子宮全摘出術をされた方は念のための腟断端細胞診をおすすめしております。きずの処置と日常生活について 退院後の入浴は可能です。
退院後、飲酒は可能ですが、暴飲暴食には注意してください。
腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)
- 子宮を摘出
- 腹腔鏡手術
お腹の4ヶ所に5~10mmほどのきずをつけて、腹腔鏡や器具を挿入し、子宮を摘出します。子宮は体内で細かく切って、小さなきずから摘出しています。
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腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)後の日常生活について
術後の出血について 子宮摘出後は、膣の一番奥にある膣断端を数ヶ月で溶ける糸で縫合します。創部が落ち着くまでは、おりものシートで足りるくらいの少量の出血が1~2ヶ月続くこともあります。生理用ナプキンを高頻度で取り替えるほどの出血がある場合はご相談ください。 腹圧に関して 膣の奥の縫合部は数ヶ月かけて治癒します。
強い負荷のかかる運動や重いものを何度も持ち上げるような腹圧をかける行為は1ヶ月程度自粛していただき、少しずつ負荷をかけるようにしてください。
また、腹圧をかけた時に出血がみられるようであれば、無理をしないようにしてください。性生活について 膣の奥の傷が治りきるまでに3ヶ月ほど要しますので、それまでは避けてください。その後は術前と変わらない性生活が可能です。 卵巣温存について 卵巣を温存した方は50歳前後まで排卵があり、女性ホルモンも分泌されます。
卵子は約0.1mm程度であり、お腹の中に落ちた後、半日程度で溶けて吸収されてしまいます。
女性ホルモンは子宮全摘しても分泌されるので、急に更年期障害になることはありません。
排卵後に胸が張る、むくむといった症状が出ていた方は術後も同じ症状が出ます。
排卵痛も起きることがありますが、一般的には1日以内で落ち着きます。
術前より月経前症候群があって困っていた方は担当医にご相談ください。
また、術前に偽閉経療法を行った方は、その薬を使用してから数ヶ月以内に卵巣機能が戻ってきます。更年期、閉経について 更年期は全ての女性に訪れるものです。その更年期特有の症状がつらくて困る状況のことを更年期障害といいます。 子宮全摘後は月経がなくなるため、更年期になったのかは分かりづらいです。
更年期障害を疑って困った時にはホルモン検査(血液検査)で確認できますので、婦人科にてご相談ください。その際に子宮全摘をし、卵巣温存をしていることをお伝えください。
また、更年期障害の時にはホルモン補充療法を行うことが可能ですが、子宮のある方は子宮体がんを予防するために2種類のホルモンを使用します。
子宮全摘後は1種類のホルモンで十分ですので、ホルモン補充療法はやりやすくなります。がん検診について 子宮全摘後は子宮頸がん、子宮体がんにはならないため、子宮がん検診は不要となります。
卵巣がんに関しては、卵巣がん検診効果が乏しいといわれているため、検診はおすすめしておりません。
卵巣がんは子宮の有無に関わらず発見しにくい病気であり、多くは腹部膨満感や下腹部痛などの自覚症状があって見つかります。
子宮全摘時には同時に卵管を予防的に切除しています。卵管は一部の卵巣がんの原因となっているため、卵管切除で卵巣がんとなるリスクは減少しています。婦人科受診について 術後は、1ヶ月、3ヶ月の診察が終了すると、定期的な婦人科受診がかなり減ります。
ただし、更年期の症状やおりもの、かゆみなどは子宮全摘後も起こり得るので、そういった時には婦人科を受診してください。
また、子宮頸部高度異形成~子宮頸部上皮内がんで子宮全摘出術をされた方は念のための腟断端細胞診をおすすめしております。きずの処置と日常生活について 退院後の入浴は可能ですが、腹腔鏡手術を行った場合は、お腹のきずの部分は優しく洗い流すようにしてください。
また、退院時に貼ったテープ(ステリストリップ)が剥がれ始めたら、アトファインを半年ほど使用することをおすすめしています。
退院後、飲酒は可能ですが、暴飲暴食には注意してください。
手術までの流れ
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- 初診
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検診での細胞診異常で来院された患者さまには、コルポスコピー検査と子宮頸部組織診を行い、異形成の程度を判断します。
子宮頸部組織診の結果は、次回の外来時に説明をさせていただきます。
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- 手術日決定・検査
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検査の結果、子宮頸部高度異形成(CIN3)となった場合には、子宮を温存するかどうかの相談をさせていただき、どのような手術が良いのかをご提案させていただきます。
また、麻酔をかける上で必要となる血液検査、胸部レントゲン検査、心電図検査なども行います。(初診日に手術日が決まった場合、これらの検査も同日に実施することが可能です。)
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- インフォームドコンセント
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手術に関して、じっくり時間をかけてご説明いたします。
ご希望があれば、ご家族やパートナーの方に同席していただくことも可能です。
手術について不明な点やご不安な点がありましたら、その都度ご質問ください。
また、麻酔科専門医による麻酔の説明もあります。
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- 入院・手術
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手術日の当日に入院となります。
子宮頸部円錐切除術の方は一般的には日帰りでも行える手術となりますが、遠方にお住まいの患者さまや午後の手術の場合は一泊することも可能です。
子宮全摘術(vNOTES、TLH)の方は1~4泊の入院期間となります。
手術当日のスケジュール
子宮頸部円錐切除術(子宮を温存)の場合は、手術当日にご帰宅できます。
- 手術前処置はありません。
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手術当日に来院していただきます。
下剤・浣腸・術前点滴の使用を控え、ストレスフリーで歩いて手術室に入室します。
- 身体に負担の少ない手術を行います。
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お腹にきずのできない腟からアプローチする経腟的腹腔鏡手術と小さなきずでおへそからアプローチする腹腔鏡手術を採用しています。
手術時間は、1~2時間程度です。
- 手術当日の夕方には帰宅できます。
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手術後は、約4時間程度病棟でお休みになっていただいた後にご帰宅となります。
患者さまのご希望があれば、1泊入院も可能ですが、日帰りでお帰りいただいても、翌日から普段通りの生活を送ることができます。
子宮全摘術(vNOTES、TLH)の場合、1~4泊の入院期間となります。
手術費用について(概算)
健康保険の適用となります。3割負担の場合のおおよその目安です。
- 子宮頸部円錐切除術
- 50,000~70,000円
- 腟式腹腔鏡下子宮全摘術
- 270,000~300,000円
- 腹腔鏡下子宮全摘術
- 270,000~300,000円
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※高額療養費制度の対象となります。所得によって決められた自己負担限度額を超えた分が払い戻されます。加入している健康保険証の発行元に事前申請を行い、交付された「限度額認定証」を退院までにご提出いただくと、医療費請求額を自己負担限度額までの金額にとどめることができ、医療費の窓口負担を抑えることができます。
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※差額室をご利用の場合は別途となります。