前立腺肥大症に対する低侵襲手術 経尿道的前立腺吊上術(ウロリフト)の効果~多施設共同研究160症例の治療成績からウロリフトの有効性と安全性を確認~
2024.11.08 プレスリリース
発表のポイント
・世界では2011年に前立腺肥大症に対する経尿道的前立腺吊上術(ウロリフト)が開始され、日本では2022年4月に保険収載されました。
・本研究は、多施設共同の観察研究であり、ウロリフトを施行した160症例を対象に検討したものです。平均年齢は75歳、手術時間は19分で、重篤な手術合併症は報告されていません。手術後1か月および3か月の時点で、排尿スコアは手術前と比較して有意に改善しており、手術成績は良好でした。
・手術前に尿閉を認めた患者群においても、手術後3か月で88%の方が排尿可能となりました。
・前立腺の大きさ別に手術成績を解析したところ、前立腺体積が50mL以上の群では手術直後に一時的な排尿困難を訴える例が多かったものの、手術後1か月および3か月においてすべての群で排尿スコアが改善していました。
・超高齢社会の日本において、ウロリフトは前立腺肥大症に有効であり、かつ体への負担が少ない安全な手術法であることが示されました。
概要
四谷メディカルキューブ泌尿器科科長 阿南 剛(あなん ごう)と公立つるぎ病院泌尿器科部長 南 秀朗(みなみ ひでろう)、岩手県立磐井病院泌尿器科長 藤島 洋介(ふじしま ようすけ)、千葉県立佐原病院泌尿器科 加賀 勘家(かが かんや)らの研究グループは、経尿道的前立腺吊上術(ウロリフト)が、高齢者の前立腺肥大症に対して有効で安全な低侵襲手術であることを明らかにしました。
ウロリフトの手術後経過を多施設共同の観察研究で検討し、160症例を対象としました。平均年齢は75歳、前立腺体積は44mL、手術時間は19分、体内に留置したインプラント数は5本でした。手術後に発熱や止血術を要する重篤な出血は報告されていません。排尿症状に関するスコア(国際前立腺症状スコア)ならびにQOLスコア、最大尿流量、残尿量は、手術後1か月および3か月の時点で、手術前と比べて有意な改善がみられました。手術前に尿閉を認めた患者群では手術後3か月で88%の方が排尿可能となりました。また前立腺体積を30mL未満、30mL以上50mL未満、50mL以上の3群に分けて比較したところ、前立腺体積が50mL以上の群では手術時間が有意に長く、使用するインプラント数も多い傾向がありましたが、手術後1か月および3か月における排尿改善には差がみられませんでした。前立腺体積にかかわらず、ウロリフトは前立腺肥大症に対して有効であることが確認されました。
今後、前立腺肥大症の患者数はさらに増加が予想されており、本研究は、日本の高齢者に対する低侵襲手術としてウロリフトの有効性と安全性を示すものであり、SDGsの「すべての人に健康と福祉を」に貢献します。
本研究成果は、2024年11月5日付け(日本時間)で国際専門誌「International Journal of Urology」に掲載されました(doi:10.1111/iju.15621)。
論文情報
論文名
Efficacy and safety of prostatic urethral lift according to preoperative urinary retention and prostate volume: A Japanese real-world multicenter date
(日本でのリアルワールド多施設データによる前立腺肥大症に対する経尿道的前立腺吊上術の有効性と安全性)
掲載誌
International Journal of Urology
著者名
Go Anan*, Hidero Minami, Yosuke Fujishima, Kanya Kaga
*責任著者
お問い合わせ先
医療法人社団あんしん会 四谷メディカルキューブ
経営管理部 広報担当
島津・永田
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