突然の背中の痛みや血尿がでたら尿路結石症かもしれません。10人に1人が発症している国民病で、人生の中で経験する三大激痛の一つとされています。治療しても約半数が再発するため、治療後の予防策が重要です。尿路結石症に関する病気の基礎知識を中心に、体への負担が少ない最新の治療や日常生活における予防策をまとめました。
1. 尿路結石症とは
尿路(腎臓から尿道までの尿の通り道)に結石ができる病気です。
腎臓内にある結石は「腎臓結石」、尿管にある結石は「尿管結石」、膀胱内にある結石は「膀胱結石」、尿道にある結石は「尿道結石」と呼ばれます。
尿路結石症は、男性では40~50代、女性は50代以降に多くみられ、96%以上が上部尿路にできる腎臓結石や尿管結石となっています。
2. 尿路結石症の原因と症状
結石ができる原因は十分に解明されていません。しかし最近では、食生活や生活様式の欧米化、人口の高齢化が発症のリスクを高める要因として考えられています。
尿路結石の多くは腎臓で作られ、尿管に結石が移動することで痛みや血尿をはじめとする様々な症状が引き起こされます。
尿路結石症になりやすい人
加齢とメタボリックシンドローム(高血圧、高血糖、肥満、脂質異常)が指摘されています。日頃の食生活に大きく左右されるため、シュウ酸が多く含まれる玉露茶や抹茶、プリン体の多い肉類や魚介類、アルコールは、控えるようにしましょう。
主な症状
結石がある場所によって症状が異なります。
腎臓に結石がある場合は、通常無症状であり、健診などで見つかることがほとんどです。症状がないため放置していると、腎臓の中で大きくなり、腎臓機能低下を起こすことがあります。定期的に検査を受けましょう。
尿管に結石がある場合は、結石がある側の側背部や腰に痛みが起こります。尿管に結石が詰まって尿の流れを妨げることが原因です。過去に腰背部痛があり、現在痛みのない方は、自然排石している場合と同部位に長期間嵌頓している場合が考えられるため、画像検査と専門医の診察が必要です。また、痛みのほかに、血尿や吐き気といった症状もあります。
さらに、結石による尿路感染症を引き起こすと、腎盂腎炎を発症し、背部痛と38度以上の発熱症状があります。
3. 尿路結石症に必要な検査と治療方法
尿路結石症の専門的診察は、泌尿器科で行います。
医療機関では、基本的に結石の場所や大きさ、尿路の閉塞状態を確認するための検査を実施し、診断を確定します。ただし、現在の病態に対して治療を行うべきか否かを十分に考慮したうえで、治療方法を選択する必要があります。
尿路結石症の検査
尿路結石症の正確な診断には、血尿や尿路感染症の有無を確認するための尿検査、結石の大きさや位置を調べる腹部X線検査、結石の有無や個数など詳細を確認するためのCT検査、腎臓の状態をみる超音波検査を施行します。必要時は、採血で内分泌的異常がないかを検査します。
治療法の選択・決定
尿路結石症は10㎜未満であれば、1カ月程度、尿と一緒に結石が自然に出るのを待ちます。
しかし、1カ月以上経っても結石が出ない場合や、10mm以上の大きな結石の場合は、積極的治療を検討する必要があります。尿路結石症の外科的治療は大きく分けて3つの方法があります。
自然排石を促す治療
一般的に10mm以下の結石は、水分を多量に摂取して尿量を増やし自然排石を促します。特にこのサイズの尿管結石は、約70%が自然排石するとされ、自然排石までの平均日数は、2mm以下で8日、2〜4mmで12日、4mm以上で22日と報告されています。
手術治療
手術方法は、結石がある場所や大きさによって異なります。
腎臓結石の場合、大きさによって術式を選択します。
尿管結石の場合、石がある位置と大きさによって術式を選択します。
体外衝撃波腎・尿管結石破砕術(ESWL)
ESWL装置の治療台に寝て、体の外から結石に向かって衝撃波を照射し、結石を砕く方法です。破砕された結石は、尿とともに体外へ排出し、結石を除去することができます。
- 体を切開しません
- 麻酔が不要です(鎮痛剤は使用します)
- 低侵襲な治療です
- 結石破砕後の結石排出は自然排出となるため、結石が尿管に残ることがあります
- 10㎜程度までの腎尿管結石が適応です
- X線に映らない結石は治療できません
経尿道的尿路結石除去術(TUL)
尿道から細径の内視鏡を挿入し、尿管や腎臓内にある結石を破砕、除去する手術です。
結石の破砕はレーザーなどで行い、破砕した結石は鉗子で摘出します。
- 体を切開しません
- 10~20mm程度の腎尿管結石が適応です
- 全身麻酔もしくは腰椎麻酔が必要です
- 確実に結石を砕き、回収します
- 硬くて大きい結石を砕けます(20mm以下)
- 手術時間は30分~90分程度です(結石の種類や数による)
- 入院期間は約2~4日間程度です
- 20mm以下の結石や水腎症を伴う結石がある方に推奨されます
経皮的尿路結石除去術(PNL)
背中から腎臓に穴を開け、その穴から直接内視鏡を挿入して、腎臓内の結石を破砕、除去する手術です。結石の破砕はレーザーなどで行い、破砕した結石は鉗子で摘出します。
- 全身麻酔もしくは腰椎麻酔が必要です
- TULよりも砕石効率は良いですが、手術侵襲が大きいです
- 手術時間は120分程度です。
- 入院期間は約5〜14日間程度です
- 20mm以上の大きな腎尿管結石がある方が適応です
4. 尿路結石症の予防3ヶ条
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1
ダイエットをしましょう
疫学調査で肥満のある方に尿路結石症が多いことが分かっています。メタボリックシンドロームにならないように食生活を見直しましょう。具体的には、塩分や糖分を摂り過ぎない、シュウ酸やプリン体を摂り過ぎない、動物性タンパク質を摂り過ぎない、夕食を食べすぎない、寝る前に食事をしない、などがあります。
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2
水分を多く摂取しましょう
尿路結石症に良い飲み物は、牛乳やミネラルウォーター、麦茶、ほうじ茶です。牛乳はカルシウムを多く含み、結石の発生を抑制してくれます。逆に、シュウ酸の多い玉露、抹茶、ウーロン茶などは、尿路結石を促進させるため、予防の観点からは摂取を減らすことをおすすめします。
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3
泌尿器科へ定期受診しましょう
尿路結石症は生活習慣病の1つで、正確な診断と適切な治療が必要です。また、再発が多いため、治療とともに再発予防が大切です。尿路結石症と診断された場合、その時点から生活習慣を見直すためにも、泌尿器科への定期的な受診は大変重要です。
5. 防ぐ・治す!尿路結石症の知恵とコツ
尿路結石症は自然排石や治療が終わっても油断せず、生活習慣の改善と定期的な検診で、再発予防に努めましょう。
大事なポイント
- 尿路結石症の正確な診断と治療の必要性の有無を確認しましょう。
- 適切な治療を行わないと、尿路感染症や腎機能低下の可能性があります。
- 10mm以上の結石は手術が必要な場合があります。
- 再発率が5年で約50%と高いため、適切な診断と再発予防が必要です。
- 尿路結石症に悩まされない人生を歩むために泌尿器科にぜひご相談ください。
尿路結石症は、鈍痛から激痛まで痛みは様々で、放置しておくと命にかかわる病気を引き起こすことがあります。健康診断で指摘された場合や痛みなどの自覚症状がでてきたら、専門医に相談しましょう。