鼠径部ヘルニアは何科を受診すべき?症状の特徴と適切な診療科を解説
鼠径部ヘルニアは、足の付け根にふくらみができる病気で、脱腸とも呼ばれます。本記事では、鼠径部ヘルニアの症状や原因、受診に適した診療科、手術による治療内容まで、専門医がわかりやすく解説いたします。
鼠径部ヘルニアとは
鼠径部ヘルニアは、生涯で男性の約20%、女性の約3%が発症するといわれる、非常に一般的な病気です。多くの方は、立っているときに足の付け根(鼠径部)にふくらみを感じ、横になると引っ込む腫れ(しこり)を自覚して受診されます。
発症しやすい年齢は60代ですが、20代でも見られることがあります。左右差はなく、片側に見られる場合もあれば、最初から両側に発症することもあります。ふくらみの大きさは、小指の先ほどのものから、まれに小児の頭ほどの大きさになることもあります。初期のうちは横になると引っ込みますが、次第に大きくなり、戻らなくなる場合もあります。
原因はいくつかありますが、成人の場合、多くは加齢による筋肉や支持組織の弱まりによるものと考えられています。男性に多い理由は、胎児のときに精巣が陰嚢へ下降する際の通り道である「鼠径管」があり、この部分がもともと女性より弱い構造になっているためです。「脱腸」という言葉を耳にしたことがある方もいらっしゃるかと思いますが、これは鼠径部ヘルニアの通称です。
また、新生児や乳児にも鼠径部ヘルニアが見られることがあります。これは、鼠径管が生まれた後も閉じずに残っているために起こります。このように、小児の鼠径部ヘルニアは成人とは原因が異なります。
鼠径部ヘルニアの症状と受診の必要性
鼠径部ヘルニアを放置すると、まれに「嵌頓(かんとん)」と呼ばれる緊急事態が起こることがあります。これは、ヘルニアの中に入り込んだ腸などの臓器が出口(ヘルニア門)で締めつけられ、血流が途絶えてしまう状態です。多くの場合、強い痛みを伴い、夜間でも緊急手術が必要になることがあります。
鼠径部ヘルニアは、自然に治ることはなく、時間の経過とともに少しずつ大きくなることが多い病気です。見た目だけでなく、違和感や痛みなど日常生活への影響も次第に増していきます。
また、嵌頓を起こしてからの緊急手術では、腸を切除しなければならない場合や、後述するメッシュ(人工補強材)を使用できない場合があり、通常の定期手術に比べて治療成績が悪くなる傾向があります。
このため、鼠径部ヘルニアが見つかった場合は、症状が軽くても早めの手術治療をお勧めします。
鼠径部ヘルニアは「外科」か「消化器外科」を受診
鼠径部ヘルニアの治療は、主に外科または消化器外科で行われています。
現在では、当院でも対応していますが、日帰り手術(短期入院手術)として行われることも多くあります。日本全体では、年間およそ16万件の手術が実施されており、全国の多くの病院で治療を受けることが可能です。
一方で、ヘルニアを専門としている医師や施設(当院のような医療機関)では、他院で対応が難しいとされる再発ヘルニアや巨大ヘルニア、全身状態に配慮が必要な患者さんなど、より高度な症例にも対応しています。
病院を選ぶ際には、通いやすさに加えて、以下の点を確認されることをおすすめします。
・手術方法(腹腔鏡手術を行っているか、または鼠径部切開法か)
・国内外の最新ガイドラインに沿った治療が行われているか
・術前の説明や検査体制の丁寧さ
・術後のフォローやケアの充実度
これらを参考に、安心して治療を受けられる医療機関を選ぶことが大切です。
鼠径部ヘルニアの治療法
市販されている「ヘルニアバンド」は、鼠径部に装着してふくらみを抑えるものですが、根本的な治療にはなりません。現在の標準的な治療は、メッシュ(人工補強材)を体内に入れてヘルニアの穴(ヘルニア門)をふさぐ手術です。
手術方法には大きく分けて、
・鼠径部を約4〜5cm切開して行う「鼠径部切開法」
・お腹の中から修復する「腹腔鏡手術」
の2つがあります。一般的に、腹腔鏡手術は術後の痛みが少なく、社会復帰(復職など)までの期間が短いとされています。日本全体でも、現在は鼠径部ヘルニアの約半数が腹腔鏡で修復されています。
当院では、9割以上の患者さんで腹腔鏡手術を実施しています。腹腔鏡手術が適さないのは、主に前立腺がん手術後の患者さんです。これは、腹腔鏡で操作するためのスペースを作る「剥離(はくり)」という作業が、手術後の癒着や瘢痕により困難になるためです。
当院では、ロボットスコープホルダーと4K高解像度カメラを用い、より精密で繊細な腹腔鏡手術を行っています。このシステムにより、国際的なガイドラインで推奨される15×10cm以上の十分な大きさのメッシュを、術後の痛みや再発のリスクを抑えながら、安全性の高い適切な層に確実に留置することが可能です。
また、2026年度よりロボット支援による鼠径ヘルニア手術が保険適用となりますが、当院では従来の腹腔鏡手術においても、これに準じた高い精度での手術を常に心がけています。
まとめ
鼠径部ヘルニアは自然に治ることはなく、放置すると症状が悪化したり、場合によっては緊急手術が必要になることがあります。特に男性に多く、加齢や筋力の低下が主な原因です。受診される際は、主に外科または消化器外科が適しています。
治療の基本は手術で、現在はメッシュを用いた修復法が標準です。手術には鼠径部切開法と腹腔鏡手術があり、腹腔鏡手術は術後の痛みが少なく、社会復帰も早いことが特徴です。四谷メディカルキューブでは、ロボットスコープホルダーや高解像度カメラを使用した精密な腹腔鏡手術により、安全性の高い手術と再発リスクの低減を目指しています。
また、患者さんのご希望やライフスタイルに応じて、治療後の過ごし方も選択いただけます。早期退院を希望される方には日帰り手術にも対応しており、ゆっくりと安心して療養されたい方には院内の宿泊室での1泊入院も可能です。
当院のヘルニア執刀医である今村清隆は、National Clinical Database(NCD)に登録されたデータによると、2011年1月から2025年12月までの間に、消化器がんや外傷などを含む計5,664件の手術に術者または助手として携わっており、そのうち約2,000件がヘルニア手術です。国内の学会・研究会に加え、国際的な学術活動にも積極的に参加し、最新の知見を日々の診療に取り入れています。
現在は手術枠を拡充しており、鼠径部ヘルニアの患者さんを初診から1ヶ月以上お待たせすることはほとんどありません。また、遠方の方やご多忙な方にも対応できるよう、土曜や祝日にも外来・手術を行っています。
メールでのご相談(ventral_hernia@mcube.jp)にも対応しております。ご不安な点がございましたら、手術前に何度でも丁寧にご説明いたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。
鼠径部ヘルニアに関するお問い合わせ・受診予約

四谷メディカルキューブは、2005年に東京都千代田区に開院した有床クリニックです。
外来診療をはじめ、身体への負担が少ない低侵襲手術や人間ドックなど、多様なニーズに幅広く対応しています。開院当初よりセコム医療システム株式会社と提携し、信頼される医療サービスの提供を使命に掲げ、これからも安心と高品質な診療に努めてまいります。
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