前立腺肥大症の手術を受けるタイミングは?泌尿器科専門医が教える判断基準と治療の選択肢
前立腺肥大症は、中高年の男性に多くみられる病気で、加齢とともに増加します。尿が出にくい、頻尿といった排尿トラブルは、生活の質に大きな影響を及ぼすことがあります。本記事では、前立腺肥大症に対して手術が必要となる判断基準や治療の選択肢を泌尿器科専門医の視点で解説します。
目次
前立腺肥大症とは?
前立腺は、膀胱の下で尿道を取り囲むように位置する男性特有の臓器です。
前立腺肥大症とは、加齢に伴って前立腺が大きくなり、尿道を圧迫することで排尿障害を引き起こす良性の疾患です。

前立腺が肥大すると、尿道が圧迫されることで、排尿に関するさまざまな症状が現れます。主な症状としては、尿が出にくい、尿勢低下、尿が途切れる、腹圧排尿などの「排尿症状」と、頻尿や夜間頻尿といった「蓄尿症状」があります。
一般的には50歳頃から発症頻度が高まり、70歳以上の男性の7割以上が、何らかの排尿症状を自覚するといわれています。
症状の進行には個人差がありますが、初期段階では「トイレが近くなった」と感じる程度の軽微な変化で、見過ごされることも少なくありません。しかし、時間の経過とともに排尿に強い不快感を覚えるようになったり、トイレの回数が増えることで、日常生活に支障をきたすようになります。
中には、排尿困難が悪化し、尿が出ない状態(尿閉)となり、緊急の対応が必要になるケースもあります。
そのため、前立腺肥大症は早期の段階で泌尿器科専門医にご相談いただくこと大切です。
主な症状には以下のようなものがあります。
・尿の勢いが弱くなる
・尿が出始めるまでに時間がかかる
・夜間に何度もトイレに行く(夜間頻尿)
・尿が途中で途切れる、中断する
・尿意切迫感(急にトイレに行きたくなる)
・残尿感(排尿後もすっきりしない)
これらの症状は、初期には軽微であっても、進行すると生活の質(QOL)を大きく損なう原因となります。たとえば、睡眠の質の低下、外出の制限、職場での集中力低下など、日常生活にさまざまな影響を及ぼします。さらに、排尿障害が続くと、膀胱機能そのものに悪影響を与え、最終的には腎機能障害につながる可能性もあるため、決して軽視せず、適切な時期に医療機関を受診することが重要です。
前立腺肥大症の手術が必要になるケースとは?
前立腺肥大症の治療は、症状の程度や患者さんのご希望によって異なりますが、すべての方が手術を受ける必要があるわけではありません。
ただし、以下のような場合には、前立腺肥大症に対する手術を検討するタイミングであると考えています。
泌尿器科では、問診や身体所見に加え、国際前立腺症状スコア(IPSS)、尿流量測定、残尿測定、超音波検査などを組み合わせて、総合的に評価します。特に残尿が多い場合や、尿の勢いが極端に低下している場合は、手術の必要性が高いと判断されます。また、薬物療法を長期間継続しても十分な改善が見られない場合には、手術による介入がすすめられます。
薬物療法で効果が不十分な場合
α1遮断薬、5α還元酵素阻害薬、PDE5阻害薬などの薬物療法を行っても、排尿困難や頻尿の改善がみられない場合は、手術によって尿道の圧迫を機械的に解除する必要があります。
急性尿閉の既往がある場合
尿が突然出なくなり、導尿やカテーテルによる処置を受けたご経験がある方は、再発のリスクが高いため、根本治療として手術をすすめる場合があります。
繰り返す尿路感染、膀胱結石、血尿などの合併症がある場合
前立腺肥大により膀胱内に残尿がたまりやすくなると、細菌感染や結石、持続する血尿の原因となります。これらの合併症がみられる場合は、手術による改善が望まれます。
日常生活に支障をきたしている場合
夜間頻尿のために十分な睡眠がとれない、排尿に時間がかかるといった症状により、QOLが大きく低下している場合も、手術を検討する対象となります。
泌尿器科専門医は、患者さんの症状の程度や前立腺の大きさ、残尿量、尿流測定、超音波検査などの結果をもとに、総合的に状態を評価し、手術の適切なタイミングを判断します。
手術以外の治療法は?
前立腺肥大症の治療は、段階的に行われます。初期段階では、生活習慣の見直しや薬物療法によって症状の改善が期待できます。
日中の活動量を適度に保つことや、水分の摂取についても極端な制限は逆効果となる場合があるため、自己判断で対応することは避け、泌尿器科専門医の指導のもとで対処することが大切です。
また、生活習慣の見直しと並行して症状を記録する「排尿日誌」をつけることは、治療効果の判定や薬剤の調整に役立ちます。
こうした日々の取り組みを継続することで、前立腺肥大症に伴う症状が緩和される可能性があります。
生活習慣の見直し
・カフェインやアルコールの制限
これらの成分は膀胱を刺激し、頻尿を悪化させます。
・水分摂取の調整
特に就寝前の多量摂取は夜間頻尿を助長します。
・規則正しい排尿習慣
便秘やトイレの我慢が症状を悪化させるため、排便・排尿リズムの安定が重要です。
薬物療法
・α1遮断薬
前立腺および膀胱頸部の筋肉を弛緩させることで、尿の流れを改善します。
・5α還元酵素阻害薬
前立腺そのものを小さくする作用があり、長期的な改善効果が期待できます。
・PDE5阻害薬
尿が出にくい、頻尿などの症状がある場合に用いられます。

症状が軽いうちに泌尿器科専門医へご相談いただくことで、より早期に、的確な対応ができると考えます。次のような症状がみられる場合には、自己判断せず、早めに医療機関を受診されることをおすすめします。
・夜間に何度もトイレで目が覚める
・排尿に時間がかかる、尿線が細い
・トイレに行っても尿が出し切れない感じがある
・急に尿が出なくなった
・血尿や発熱を伴う排尿症状がある



前立腺肥大症の手術の種類と特徴
現在、前立腺肥大症に対して行われる手術には複数の方法があり、症状の程度や患者さんのご希望に応じて選択されます。
経尿道的前立腺切除術(TURP)
内視鏡を用いて尿道から前立腺の内側を削り取る方法で、現在もっとも標準的な術式として広く行われています。確実な効果が期待でき、幅広い症例に適応できることが特徴です。一方で、出血のリスクがあり、入院期間がやや長くなる傾向があリます。手術時間は60〜90分程度で、術後の経過が順調であれば4〜7日ほどで退院することができます。

経尿道的前立腺吊り上げ術(ウロリフト)
前立腺の組織を切除することなく、金属製のインプラントを用いて尿道を圧迫している前立腺を外側に引き寄せて開く低侵襲の手術です。この方法の大きな特徴は、性機能への影響が少ないことにあります。また、手術時間が短く、約15分程度で施行できるため、日帰り手術が可能な場合もあります。一方で、前立腺が非常に大きい場合は適応外となることや、将来的に再治療が必要になることがあります。手術後の回復も早く、通常1~2日程度で退院が可能です。

経尿道的前立腺水蒸気治療(Rezum)
水蒸気エネルギーを前立腺内に注入し、組織を熱で壊死させて縮小させる新しい治療法です。前立腺の組織を切除せずに治療が行えるため、身体への負担が少なく、性機能を温存できる可能性が高いことが特徴です。手術時間は約10分と短く、日帰りでの施行も可能です。ただし、治療効果が現れるまでに数週間を要するため、術後1〜2週間程度は尿道カテーテルの留置が必要となります。カテーテル抜去後、排尿は通常2〜4週間ほどで安定してくるとされています。
前立腺レーザー核出術(HoLEP)
レーザーを用いて前立腺の内腺をくり抜くように核出する手術方法です。切除量が多く、治療効果が長く持続することが特徴です。特に前立腺が大きく肥大している方にも適応でき、出血が少なく、再発のリスクも低い点は大きな利点といえます。手術時間はおおよそ90〜150分程度で、術後の経過が順調であれば4〜7日ほどで退院が可能です。ただし、HoLEPは現在、一部の医療機関でのみ実施されており、施行には高い技術を要するため、術者の熟練度が重要とされています。

前立腺レーザー蒸散術(PVP / CVP)
高出力のレーザーを用いて前立腺組織を蒸散させる治療法です。この治療法の大きなメリットは、出血が非常に少なく、抗凝固薬を内服中の方でも、状態によっては手術が可能なケースが多いとされています。また、術後の尿道カテーテルの留置期間が短くて済むことも、患者さんにとっての利点の一つです。手術時間はおおよそ90分程度で、術後の経過が良好であれば4〜7日ほどで退院が可能です。一方で、HoLEPと比べて深部の組織まで取り除くことは難しいため、非常に大きな前立腺には適さない場合があります。

前立腺肥大症の手術に伴うリスク
前立腺肥大症の手術には一定のリスクが伴いますが、多くは軽度で一時的なものであり、適切な医療機関と経験豊富な術者による管理のもとで行われれば、安全に実施されるケースがほとんどです。主なリスクには以下のようなものがあります。
・出血:特にTURP(経尿道的前立腺切除術)では出血のリスクが高いため、術後の管理が重要となります。
・尿失禁:術後一時的に見られることがありますが、多くの場合、数週間以内に自然に改善します。
・逆行性射精:射精時に精液が膀胱内に逆流する現象で、HoLEPやTURPなど一部の手術で比較的高い頻度でみられます。
・感染症:術後は尿路感染などに注意が必要です。
手術を検討する際には、希望する医療機関がどのような前立腺肥大症の手術法に対応しているのか、また、手術件数や実績なども確認しておくと安心です。
まとめ
前立腺肥大症は、加齢に伴い多くの男性が経験するごく一般的な疾患です。症状が軽いうちは、生活指導や薬物療法によって対応が可能ですが、重症化すると日常生活に支障をきたし、手術による治療が必要となる場合もあります。
本記事でご紹介したとおり、現在では複数の手術法が確立されており、患者さん一人ひとりに合わせた「オーダーメイドの治療」が可能となっています。どの治療法を選択すべきか悩まれている方は、ぜひ一度、泌尿器科専門医の診察を受けてみてください。
四谷メディカルキューブ泌尿器科では、「前立腺肥大症」を専門とする泌尿器科専門医が診療を担当いたします。初回の受診時には、超音波検査による前立腺体積の測定、尿流量検査による尿の勢いや量の評価、残尿量の確認、さらに排尿症状スコアを用いた総合的な評価を行い、現在の前立腺肥大症の状態についてご説明しています。まずは生活指導や薬物療法による治療を行い、手術を希望される方には、経尿道的前立腺吊り上げ術(ウロリフト)や経尿道的レーザー前立腺核出術(HoLEP)を中心に手術方法を一緒に検討してまいります。
当院では、身体への負担が少ない低侵襲手術に対応しており、患者さんの生活背景やご希望を大切にした治療を心がけております。
初めてのご相談で不安を感じている方にも、わかりやすく丁寧にご説明いたしますので、安心してご来院ください。
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四谷メディカルキューブは、2005年に東京都千代田区に開院した有床クリニックです。
外来診療をはじめ、身体への負担が少ない低侵襲手術や人間ドックなど、多様なニーズに幅広く対応しています。開院当初よりセコム医療システム株式会社と提携し、信頼される医療サービスの提供を使命に掲げ、これからも安心と高品質な診療に努めてまいります。
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