下肢リンパ浮腫 (かしりんぱふしゅ)
マイクロサージェリー(マイクロスコープで確認しながら行う手術)
【監修/平瀬雄一医師】
関連キーワード
  • リンパ浮腫
  • むくみ
  • 下肢
  • マイクロサージェリー
  • リンパ
リンパ浮腫

下肢リンパ浮腫とは

下肢リンパ浮腫は足がむくむ病気のひとつです。感染や、生まれつきのものや原因不明のものもありますが、その多くは各種のがん(子宮がん、前立腺がんなど)の治療(手術や放射線治療など)でリンパ液の流れが悪くなることで発生します。

とくに婦人科・外科における腹部手術の施行後、数年間経過してから次第に下肢に浮腫が生じてくることがあります。下肢にリンパ浮腫が発生すると歩行に支障が生じるため、日常生活上の自由度が制限されます。さらに、下肢においては感染が生じやすいので、蜂窩織炎(細菌による化膿性炎症)の状態に陥りやすくなります。蜂窩織炎をくりかえすと皮膚および皮下組織が肥厚し、象皮症の状態となります。日本の二次性リンパ浮腫の原因の約半数は、子宮がんの治療によるものと言われています。とくに、子宮がんでは股の部分にリンパ節が密集しているため、そのリンパ節を除去したり、リンパ管を結紮することで足にむくみ=リンパ浮腫が起こりやすくなると考えられます。

治療法について

今のところ、リンパ浮腫に関して完治や予防の方法はなく、その治療や対処は困難です。したがって、治療の目標はリンパ浮腫によるだるさや痛みや太さを少しでも軽減することが主体となります。従来から行われている保存療法としては、患肢挙上、安静、塩分制限などの生活指導、利尿剤などの薬物投与、空気圧マッサージや弾性ストッキングを用いた治療があります。また、リンパ浮腫の手術方法としては、歴史的にはリンパ誘導術、浮腫組織切除術、切除誘導術などがありました。しかし、従来の外科手術は不確実で効果は限定的でしたので現在は行われることは少なくなりました。したがって、リンパ浮腫の患者さんたちは弾性ストッキングなどの圧迫療法や安静以外に有効な方法がないという状況に長らく置かれてきました。

しかし、このような従来の治療法では改善しないリンパ浮腫の症例に対して、この10年ほどの間に少しずつリンパ管静脈吻合術なる方法が行われ、今までにない良好な結果も報告されるようになってきました。

リンパ管静脈吻合術とは

この手術法は、足のむくんだ部分のリンパ管を静脈に縫合することで、うっ滞したリンパ液を中枢方向へ流そうという方法です。0.3 ~5mm程度の細いリンパ管を手術用顕微鏡の下で0.5 ~1mm程度の静脈に縫合するので術者には高度な技術を必要としますが、1か所が3cm程度の傷で済むため患者さまには負担の少ない手術です。リンパ浮腫の程度によりますが、通常は1日から数日入院で済みます。

手術時間

リンパ管は支配領域が分かれているためいくつかの部位に分けて行います。たとえば、下肢リンパ浮腫では末梢から、足背中央部、下腿前面、下腿内側、大腿内側などに2~3cmの小さな切開を加えて数か所で縫合します。初回手術の多くは2~3時間かかります。症状が残った部位には追加で手術を行います。

治療効果

  • リンパ浮腫_術前
    術前
  • リンパ浮腫_術後3か月
    術後3か月

リンパ管静脈吻合手術を行っても下肢リンパ浮腫の症状(だるさ、痛み、太さ)が完全に消えるわけではありません。本来、この病気は進行性であることから、患肢挙上や圧迫療法は手術後も継続して行う必要があります。しかし、リンパ管静脈吻合手術は患者さまにとってのデメリットはほとんどなく、重症のリンパ浮腫例では劇的な改善をみるものもあります。
この手術が行われる施設は先進国を中心に徐々に増えつつありますが、その一方で、長期成績の報告が十分でないために、懐疑的な立場の医師もいます。したがって、手術内容を十分に理解した上で手術を受けられることをお奨めします。

過去の報告を見ますと、Koshimaら(2003)は下肢リンパ浮腫52例に対してこの手術を行い、82.5%に何らかの症状の改善があり、17症例では4cm以上の太さの軽減があったと述べています。四谷メディカルキューブ手の外科センター長である平瀬が行った下肢リンパ浮腫自験例の成績評価では、全28症例中、20例(71.4%)で大腿の周径が細くなり、26例(92.9%)で皮膚が柔らかくなったり歩行時のだるさや痛みがやわらいでいました(術後3ヶ月評価)。ただし、その半数では2回以上の手術が必要でした。最近増えてきたほかの施設での成績をみても、下肢に関しては概ね80%以上の良好な成績が報告されています。
参考文献
KoshimaI, Nanba Y, Tsutsui,Tet al. Long-term follow-up after lymphaticovenularanastomosis for lymphedema in the leg. J. Reconstr. Microsurg.2003,19(4):209-215

費用

下肢リンパ浮腫の手術は保険適用になっています。具体的な手術費用は吻合するリンパ管の数や麻酔方法によって異なりますので診察時にお尋ねください。概算をお伝えします。

診療予約のご案内
下肢リンパ浮腫に対するリンパ管静脈吻合術の外来診療は予約制となっております。下記予約専用電話番号にてご予約ください。
診療予約受付:電話番号03-3261-0430 (9:00-17:00・日曜/祭日を除く)
ページの先頭へ戻る