手のひらの多汗症(手掌多汗症・手汗)とは
多汗症は、腋の下、手のひら、足の裏、頭部などに左右対称性に異常に発汗する病気(原発性局所多汗症)です。このうち、手のひらに日常生活をするうえで色々な障害をもたらすほど発汗する病気が、手掌多汗症(手のひらの多汗症)です。手のひらに汗を異常にかく方の大半(ほぼ100%)は、足の裏も同様な汗の出方になりますので、掌蹠(しょうせき)多汗症とも呼ばれています。
基本的には生まれつきの病気で、小学生・中学生くらいから他の人よりも手汗の量が多いかなと自覚される方が多いです。
汗が出る場所
汗は汗腺からでます。汗腺には「エクリン腺」と「アポクリン腺」の2種類があり、それぞれに汗の性質が異なります。手のひら・足の裏には毛穴がありません。そのため、手掌多汗症はエクリン汗腺由来の発汗となります。
- エクリン腺
- 全身に分布。主に体温調節のために汗を出す汗腺。無臭。
- アポクリン腺
- 腋の下、乳首、下腹部、耳など限られた場所に分布。毛根に汗腺の開口部がある。においのもととなる脂質やたんぱく質を含む。
発汗の分類
汗は機能の違いから、3つに分類されます。
「手に汗握る」「冷や汗をかく」といった言葉に関係するように、手掌多汗症は精神性発汗となります。
腋はエクリン腺とアポクリン腺が共存し、温熱性発汗と精神性発汗が両方起こる特殊な場所です。
温熱性発汗
暑いときや運動をしたときに、体温を一定に保つために発汗する。
- 汗をかくとき
- 暑いとき、運動したとき。
- 汗をかく部位
- 全身(手のひら・足の裏を除く)
- 汗腺の種類
- エクリン腺
精神性発汗
感情や情動、精神的ストレスなどによって発汗する。
- 汗をかくとき
- ストレスや緊張
- 汗をかく部位
- 手のひら、足の裏、腋など局所的
味覚性発汗
香辛料がきいた辛い物を食べたときなどに、味覚の刺激によって反射的におこる発汗。
- 汗をかくとき
- 温かい物・辛い物・すっぱいものを食べたとき
- 汗をかく部位
- 特に額や鼻など
- 汗腺の種類
- エクリン腺
発汗の原因
手掌多汗症を含め、精神性発汗のメカニズムの詳細はわかっていません。
交感神経の機能亢進の状態が続くことでエクリン腺が活性化され、多量の汗がでるということはわかっていますが、なぜ機能亢進の状態が続いてしまうのかということは解明されておらず、手のひらや足の裏に集中的に汗が出る機序もわかっていません。
また、他のご家族に同様の症状のある方が25~50%認められますが、遺伝的原因なども解明されていません。
手掌多汗症の状態
手のひらの汗の出る量は、時間帯やその日の気温、緊張の度合いによっても異なりますが、目安のためにレベル1〜3に分けています。また、重症度判定はHDSS分類(多汗症疾患重症度評価度)を用いて行い、スコア3・4を重症としています。
治療の適応
程度の軽い方を入れると約4%の方が手掌多汗症であると考えられます。手術適応となる重症の手掌多汗症の方は、100人に1人程度と言われています。
ガイドラインでは、過剰な手のひらの発汗が明らかな原因のないまま6か月以上認められ、以下2項目以上があてはまるものとされています。
- 最初に症状がでるのが25歳以下であること
- 左右対称性に発汗がみられること
- 睡眠中は発汗が止まっていること
- 1週間に1回以上多汗のエピソードがあること
- 家族歴がみられること
- 発汗によって日常生活に支障をきたすこと