骨盤臓器脱・性器脱(こつばんぞうきだつ・せいきだつ)

女性に日常的に見られる疾患です。一人で悩まないで。
【監修/嘉村康邦医師】
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骨盤臓器脱・性器脱

■悩みにさよならしたい方、集まれ!
女性泌尿器科では、泌尿器科症状でお悩みをお持ちの女性が【より豊かな生活を送れるように】という考えのもと、
スワンの会を設立しました。
第4回を2017年1月31日(火)に開催致します。
ご興味のある方はこちらのページをご参照下さい。

子宮脱などの骨盤臓器脱(性器脱)の治療

子宮脱などの骨盤臓器脱性器脱)の治療には大きく分けて(1)保存的治療、(2)各種手術の2つがあります。
どの治療を選択するかは様々な因子によります。どんな脱でその程度はどうなのか、症状の重症度、年齢や身体状況(大きな合併症がないかなど)、挙児希望の有無、生活スタイルなどを総合的に考えなければなりません。

保存的治療法

(1)骨盤底筋体操(ケーゲル体操)

軽症の骨盤臓器脱には、骨盤底筋を鍛える体操(ケーゲル体操)が有効です。
この体操で脱が治るということはないのですが、脱の進行がくい止められ、脱に関連する痛みが緩和されたり、尿失禁の改善が期待できます。またこの治療は即効性はあまり期待できませんが、根気強く続けることで、自分の力で症状の改善を得ることができます。

最初は正しい骨盤底筋の収縮をさせることができない患者さんが大変多いため、専門の医師、看護師や理学療法士による指導が不可欠です。当院女性泌尿器科では専門スタッフが骨盤底筋体操指導を行っています。

(2)膣内装具(イントロール、ペッサリーなど)

「手術はちょっと・・・」と躊躇されたり、合併症などの問題で手術ができない場合など、膣内装具で脱を元の位置にもどして症状をとる方法があります。
避妊具用のペッサリーがよく使われますが、脱の症状は取れても腹圧性尿失禁がひどくなる場合がありますので、適したものを選択することが大事です。当院では、尿失禁にも子宮脱などの骨盤臓器脱にも対応できる膣内装具を準備しています。膣内の炎症を防ぐため、当院では基本的には自己着脱で使用します。朝挿入し夕方や夜に抜去したり、気になるときだけ使用する自己着脱を指導させていただきます。欧米での腟内装具の使用は自己着脱が一般的で、手の疾患のため力が入らないなどなければ、80-90代のご高齢の方でも問題なく行えます。

ウォーレスリング
ウォーレスリング・ペッサリー
提供:スミスメディカル・ジャパン
ミレックスリング
ミレックス・ペッサリー

脱の状態に合わせて、様々なタイプのリングを使用しています。

子宮脱などの骨盤臓器脱(性器脱)の手術療法

1.経腟的骨盤臓器脱修復術(腟からの手術)

メッシュを使用する手術と使用しない手術の2種類があります。子宮温存可能です。また、子宮摘除後の方も手術可能です。
骨盤臓器脱手術の経験豊富な泌尿器科専門医が保険診療にて行っています。
当院での経腟的手術の入院期間は原則2泊3日です。年間約200件の手術を行っておりますが3日間の短期入院による大きな問題はこれまで発生しておりませんので、ご安心ください。腟から手術を行うため、お腹にキズはつきません。
脱の再発予防のため、退院後も激しい運動や重い物を持つ(4㎏以上を目安に)腹圧がかかるような活動は1ヶ月半程控える必要があります。日常生活に問題はありません。腹圧のかからないデスクワークなどであれば仕事も可能です。

● TVM(Tension-free Vaginal Mesh)手術

- 経膣的なメッシュ使用の骨盤臓器脱修復手術

2000年にフランスの婦人科医コッソンらは、骨盤臓器脱(性器脱)に対する従来の手術方法の高い再発率を改善させるべく、ポリプロピレンのメッシュで弱くなった支持組織を置き換える術式を開発しました。これが Tension-free Vaginal Mesh手術(TVM手術、経膣メッシュ手術)です。

TVM手術は、ちょうど外科が鼠径ヘルニア手術において従来法の高い再発率を改善させるべくメッシュ材料を使うようになったのと似ています。
TVM手術は日本においても優れた人工材料が市販されるようになり、しだいに広まりつつあります。比較的新しい術式ですので、まだ30年といった長期成績はわかりませんが、15年の中期成績は非常に優れており、患者満足度も高い手術といえます。

当院では、個々の患者さんの状態にあわせて、近年欧米で主流の小さなメッシュを使用するタイプのTVM手術を行っています。小さなメッシュを使用することで、頻度は大変少ないですがメッシュに伴う合併症を極力減らそうとしています。

【Prolift時代のメッシュ】
【Prolift時代のメッシュ】
【現在のメッシュ】
【現在のメッシュ】
【現在のメッシュ】
Polyform

従来のタイプよりメッシュのサイズは小さくなり、最小限のメッシュでの修復を行っています。

手術時間は、臓器脱のタイプによって異なります。当院での全てのタイプでの手術時間の平均は52分で、一番多い膀胱や子宮がメインで下垂するタイプの手術時間は30-40分前後と短く侵襲は小さいと考えられます。
実際の手術では、麻酔をかける時間、手術開始前の準備の時間、麻酔を覚ます時間や、症例によっては腹圧性尿失禁に対するTVT手術も同時に行うことがありますので、手術室に1-2時間滞在することが多いです。

TVM手術のキズは脱のタイプにもよりますが、多くの患者さんで腟内と、肛門の付近のおしりに左右一つずつ約7mmのキズのみで大変目立ちにくいです。お腹は切らないためお腹にキズはつきません。おしりの2ヶ所の7mmのキズを避けたい方は、手術時間が若干長くなりますが特別な器械を使用することでキズを腟内のみにすることも可能です。

欧米で性交時の違和感などのトラブルの報告があり、性交頻度が高い方や30-40代の方は以下の経腟的なメッシュを使用しない骨盤臓器脱修復手術や腹腔鏡下のメッシュ使用の骨盤臓器脱修復術をおすすめしています。

当院のこれまでのデータでは、メッシュ量の多い従来型TVM手術でも性交のある患者さんでもTVM手術術後の性機能について悪いという結果は出ておりません。日本では欧米より性交が定期的にある患者さんの割合も大幅に少なく、性交がある方でも頻度が大幅に少ない背景もあるためかもしれません。しかしながら、性機能温存を重視する方については、積極的に以下の術式をおすすめしています。

● TVM手術以外の経腟的骨盤臓器脱修復術

- 経膣的なメッシュ使用しない骨盤臓器脱修復手術 NTR:Native Tissue Repair

経腟メッシュ手術が開発される前から行われている手術です。
患者さんご自身の組織を使って修復しメッシュを使用しないため、メッシュ使用の手術とくらべ骨盤臓器脱の再発率は高いといわれています。しかしながら、脱のタイプでNTRでも再発率が低いと考えられる方、合併症により侵襲の少ない手術が必要な方、生活活動の状況により再発のリスクが低いと考えられる方、挙児希望の方、性機能を重視される方、メッシュによる合併症発生のリスクが高いと考えられる方などには大変良い手術ですのでおすすめさせていただいています。子宮をとらない方法もあります。
具体的には腟壁形成術、経腟的子宮仙棘靱帯固定術、マンチェスター手術、膣閉鎖術などが挙げられます。

2. 腹腔鏡下骨盤臓器脱修復術

● LSC(Laparoscopic sacrocolpopexy)手術 腹腔鏡を用いた腟仙骨固定術

- 腹腔鏡下でのメッシュ使用の骨盤臓器脱修復手術

腹腔鏡下にメッシュを用いて膣尖部または子宮頸部を仙骨に固定する手術方法です。骨盤臓器脱と子宮疾患を合併している方、性機能を重視される方などにおすすめさせていただいています。

女性泌尿器科と連携の上、腹腔鏡手術の経験豊富な婦人科専門医が保険診療で行っています。手術治療は日本産科婦人科内視鏡学会の技術認定医であり、また技術認定医審査を担う技術認定制度委員でもある子安センター長婦人科)、同じく技術認定医である西尾医師、山田医師のもと実施しております。

診療予約のご案内
診療予約受付:電話番号03-3261-0414 (9:00-17:00・日曜/祭日を除く)
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