手の外科・主な疾患紹介

手根管症候群

症状

切断指と爪欠損

母指・示指・中指・環指の母指側半分から手掌にかけてしびれがあります。症状が進むと、母指の付け根の筋肉(母指球筋)が萎縮してやせてくるため、母指と他の指を使った細かい作業ができにくくなります。
男性よりも女性に多く、妊娠や更年期の女性に多く見られます。男性にもみられ、手を使う重労働者や骨折によっても発症します。糖尿病・透析患者にも多くみられます。手首の内側を強く押さえると、しびれが指先まで放散します。

病態

手の感覚を担う正中神経が手首の部分(手根管)で靱帯や腱に圧迫されることにより神経麻痺が起こっています。

治療

初期ではビタミン剤の内服や、ステロイド剤による手根管内への局所注入が行われます。あたらしい種類のステロイド剤が開発され、局所注入は従来に比べて劇的な改善がみられるようになってきました。これらの方法でも改善が乏しい場合は手術の適応となります。手術は比較的短時間で、1日もしくは短期間の入院で行えます。手関節部分に数センチの小さな切開から圧迫されている正中神経を解放します。通常は数週間以内に症状は消失します。進行した手根管症候群では腱移行などの手術を必要とする場合もあります。

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バネ指、腱鞘炎

症状

指が動かしにくい、動かそうとするとひっかかるようなバネ現象が見られます。進行すると指は曲がったまま伸びなくなります。中指と母指に多くおきますが、どの指にも起こりえます。更年期・妊娠時・産後の女性に多いですが、男性にも起こります。糖尿病・透析患者にも多くみられます。

病態

指を曲げる屈筋腱は腱鞘というトンネルのような筒の中を滑走しています。何らかの原因で腱や腱鞘が腫れると腱の通過障害が起き指が動かしにくくなります。

治療

バネ指 手術後数回の局所注入を行っても繰り返し発症する場合は手術の適応となります。小さな切開から狭窄した腱鞘を切開します。
写真は示指・環指バネ指手術の小切開

局所の安静が必要ですが、最近は新しいステロイド剤が開発され、腱鞘内への局所注入が劇的に効果を示すようになりました。

※下記写真は、バネ指により伸びなくなった中指が
  1回の腱鞘内注入で伸展可能となった様子
バネ指 注入前と注入後

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ドケルバン病

症状

手首の母指側に腫れと痛みが生じます。母指を伸ばしたり、曲げたりすると疼痛は増強します。

病態

この部分には第一コンパートメントという腱鞘があり、その中を短母指伸筋腱と長母指外転筋腱という1本の腱が滑走しています。腱鞘が肥厚すると腱の滑走が障害され炎症(腱鞘炎)がおきます。基本的には母指の使いすぎによります。パソコン作業を多く行う人やスポーツマンに多くみられますが、妊娠時・産後・更年期の女性にも多くみられます。また、たとえば新生児の首を押さえながらだっこしたりする際などのように母指で何かを長く支える姿勢をつづけるとおこります。

治療

まずは安静にします。母指と手首に包帯やサポーターを巻いて母指の動きを制限するだけで効果があります。冷湿布も効果があります。次の保存療法としては、麻酔薬と混ぜたステロイド剤の腱鞘内への局所注入が劇的に効果を示します。手術方法としては小皮切からの腱鞘切開があります。新しいステロイド剤の局所注入が効果があるため最近は手術例は減少しつつあります。

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ヘバーデン結節

症状

ヘバーデン結節 エックス線

最も指先の関節(DIP関節)が腫れたり曲がったりして痛い。痛みのために手指を強く握ったりできない。形が悪く、人前に指を出したくないという患者さんも多くおられます。水ぶくれのような膨らみ(ミューカスシスト、粘液嚢腫)が出てくることもあります。

病態

一般に40歳以降の女性に多く見られますが、原因は不明です。女性ホルモンの減少を原因のする説もあります。関節の変形だけでなく、痛みが強く日常生活に支障が出ます。X線では関節の変形、関節裂隙(かんせつれつげき)の狭小、骨棘(こつきょく)がみられます。

治療

ヘバーデン結節

まずはテーピングが効き目があります。また、変形性関節症の患者さまには冷え性の方が多いので、末梢循環改善剤の投与が効果がある場合もあります。テーピングだけでは痛みが引かない場合はステロイド剤の関節注入が効果的な場合もあります。変形が高度な症例では手術によりDIP関節の形成あるいは固定を行います。関節固定術では関節は動かなくなりますが、手前の関節がちゃんと動いていれば、痛みなく指が動かせるようになり日常生活は楽になります。

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ブシャール結節

症状

ブシャー結節

指先から2番目の関節(PIP関節)がこぶ状に膨らんで指が曲がって変形してきます。痛みが強い場合も全く痛みのない場合もありますが、関節の変形がすすめば指がよく曲がらなくなります。

病態

閉経前後の女性に多く見られます。軟骨の変性により、X線では、関節裂隙(かんせつれつげき)の狭小、骨棘(こつきょく)がみられます。ホルモンのバランス異常が背景にありますが、放置されている腱鞘炎を持っている場合がほとんどです。家族性遺伝であるとする説もあります。

ブシャー結節

治療

末梢循環改善剤(ビタミン剤内服)や消炎鎮痛剤(塗り薬)を投与して保存的治療を行います。ステロイド剤と麻酔剤の関節内注射も効果があります。変形が高度な場合は人工関節に置換する手術を行います。

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ガングリオン

症状

手首の甲、手首の内側、手掌にグリグリとした膨らみができたりします。多くの場合が痛みはありませんが、手首の甲にできると神経を圧迫するため手をついて立ち上がるような時に痛みがあります。

病態

関節包や腱鞘から発生すると考えられています。必ずしも手をよく使う人に出るとは限りません。

治療

痛みを伴わない場合は放置しておいてもかまいません。神経の圧迫症状が出る場合は、ゼリー状内容物を抜き取ったり、ステロイド剤を注入したりします。繰り返す場合は手術により摘出します。手掌にできたガングリオンはバネ指の原因となる場合が多く摘出します。いずれも短時間で行える手術で入院は必要ありません。

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マレット指変形

症状

突き指によって生じる事が多く、第一関節が伸ばせなくなります(自動伸展不能)。症状がすすむと第一関節は曲がり、第二関節は反り返るようになります(スワンネック変形)。

病態

主に2つの病態があります。一つは腱断裂によるもので、指をのばす腱が第一関節(DIP関節)で断裂しておこるものです。他方は末節骨の骨折によるものです。

治療

マレット指変形

腱断裂によるものは保存的治療あるいは鋼線による指伸展位固定などが有効です。まれですが手術を行う場合もあります。骨折によるものは手術による骨折の整復が必要です。多くはX線透視下で鋼線により固定します。

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テニス肘(上腕骨外側上顆炎)

症状

動かすと肘の外側が痛く、腕を捻ったり伸ばしたりすると痛みは増強します。タオルを絞ったりすることがつらくなります。

病態

手首や指を伸ばす伸筋群が上腕骨に付着している部分が炎症をおこしているものとおもわれます。テニス肘という名前がついていますが、テニスとは無関係におきます。中指を伸展させた状態で他動的に屈曲させたり、手首を他動的に屈伸させて痛みが誘発されればテニス肘と診断できます。

治療

保存的治療は安静・湿布とテニス肘洋バンドの装着です。テニス肘用バンドはスポーツ店や病院で手に入ります。また、麻酔薬入りステロイド剤の局所注射も効果があります。このような治療の抵抗例に対しては、最近、新しい手術法も報告されてきています。

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舟状骨骨折

症状

手をついたり、重いものを持つと手首に痛みが生じ力が入らなくなります。怪我の直後は痛みと腫れがありますが、時間とともに痛みは軽くなります。しかし、次第に手首の動きが悪くなり痛みを生じるようになります。

病態

舟状骨骨折

スポーツや事故で手首を付いて転倒すると舟状骨骨折をおこします。単なる捻挫だと放置すると、骨がつかず(遷延治癒)、偽関節となり、関節全体が変形してきます。舟状骨骨折は受傷直後のX線にははっきりと写らない場合が多く、専門医でないと見落とすことがあります。そのため、十分な固定が行われず、結局、偽関節となって発見されることが多くあります。たとえ鈍痛でも、手首に痛みが残っている場合は舟状骨骨折を疑って多くの方向からX線をとるかCT撮影をする必要があります。

治療

舟状骨骨折治療の問題点は、舟状骨は血行がわるく非常に治りにくい骨折であるということです。したがって、ギプス固定は通常の骨折より長くなります。しかし、最近は手術法が改良され、早期から手術(X線透視下でのネジによる固定など)によって積極的に治療するようになりました。また、すでに偽関節となっている場合は骨移植などの手術が必要です。

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強剛母指

症状

乳児期に母指の関節が曲がったままで伸びない状態で発見されます。母指の付け根にしこりをふれます。

病態

腱鞘内を滑走する腱が太くなり腱の通過障害が起きています。

治療

自然治癒することもあります。小学校入学前になっても治っていなければ手術で腱鞘の切開を行います。短時間の手術ですが幼児ですので短期間の入院で全身麻酔となります。最近は早めに手術するようになってきました。

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母指CM関節症

症状

切断指と爪欠損

ものをつまむ時や瓶のふたを開ける時に痛みがあります。進行すると母指の基部(CM関節)が突出した変形がおきます。

病態

使い過ぎや加齢によって母指基部のCM関節が変形し関節軟骨の摩耗によって亜脱臼してきます。

治療

消炎鎮痛剤の投与、固定装具、ステロイド剤の関節内注入をおこないます。変形が進行した症例では、人工関節置換術、関節固定術、関節形成術などが行われます。

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肘部管症候群

症状

小指と環指の外側にしびれがあります。麻痺が進行すると指間部の筋肉がやせてきたり、小指と環指がのばせなくなります(かぎ爪変形)。

病態

肘の内側で尺骨神経が圧迫されたり伸展されたりすることにより発症します。ガングリオンや加齢によってもおきますが、小児期の骨折が原因となる場合もあります。

治療

薬物投与による保存療法が成功しない場合は手術治療の適応となります。尺骨神経を圧迫している骨を削ったり、筋膜を切開したりします。神経全体を前方に移動させる方法もひろく行われています。

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デュピュイトラン拘縮

症状

デュピュイトラン拘縮

手掌から指にかけてこぶのような硬結ができ、次第に指が伸ばしにくくなります。環指・小指に多く出ますが、母指以外の他の指にも発症します。

病態

手掌の皮膚の下にある腱膜の肥厚や拘縮(ひきつれ)によっておきます。手掌だけでなく、足の裏や陰茎に発症する場合もあります。男性に多く発症します。また、糖尿病を合併している場合が多くあります。多年にわたる飲酒歴がある方たちが多いといわれています。皮膚疾患や腫瘍と誤診される場合があります。

治療

指がひきつれたり痛みが出たりして日常に支障を来すようになると手術による腱膜の切除が必要となります。手術は難しく専門医による治療が必要です。

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肘内障

症状

子供が肘を引っぱられた後に痛がって腕をさげたまま動かさなくなります。5歳以下の子供にみられます。

病態

肘の橈骨頭の部分で靱帯がはずれかかっておきます(亜脱臼)。

治療

まず、X線で骨折がないことを確認します。次は専門医による徒手整復により一瞬で亜脱臼は整復されます。24時間以内は再亜脱臼しやすいので腕をひっぱらないように注意します。

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切断指・爪欠損

事故や生まれつき爪が欠損している症例では爪の移植や再建が可能です。指の変形や爪の欠損の状態により、さまざまな手術法がありますが、きわめて難しい手術を必要とする場合もありますので、ご相談ください。

切断指と爪欠損

>>「疾患別治療案内」マイクロサージェリー/切断指、指の変形に対する爪移植手術

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四肢先天異常

手足の先天異常には、指が多い多指症、指が少ない裂手症、指が短く癒合している短合指症、くびれがある絞扼性症候群、母指形成不全など多様な病態があります。これらの疾患では治療は手術療法が原則ですが、初回手術がきわめて重要です。十分にセカンドオピニオンを集めて、執刀医との理解を深めてから決断するのがよいでしょう。お子さんの身になって使いやすい手指を再建するように努めていますのでご相談ください。

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グロームス腫瘍

症状

グロームス腫瘍

爪に割れ目ができ、爪を圧迫すると痛みがある。お風呂や冷水などの寒暖差によって痛みが増大する場合があります。

病態

爪の下には爪床とよばれる部分があり、爪を末梢に運んでいます。この爪床は骨の上の爪母より産生されています。グロームス腫瘍の多くはこの爪床と骨の間にあるため、爪の変形がおきます。

治療

爪の変形などから専門医が診ればすぐに診断がつきますが一般的には知られていないため多年にわたり診断がつかないまま放置されている症例が多く存在します。手術による腫瘍の摘出以外に方法はありません。最近は爪を全部抜かなくても腫瘍を摘出できるようになりました。

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橈骨遠位端骨折

橈骨遠位端骨折
橈骨遠位端骨折のX線像

症状

手首の関節部の痛み、腫れ、関節可動域の制限が起こります。そして手関節から手にかけての変形が見られます。時に橈骨の手のひら側を走っている正中神経が、骨折した骨や腫れで圧迫されると、母指から環指の感覚が障害されます。

病態

前腕の2本の骨のうちの橈骨が手首のところ(遠位端)で折れる骨折です。転倒して手をついた時に生じます。骨折の中でも頻度が高く、特に閉経後の中年以降の女性や高齢者では骨粗鬆症で骨が脆くなっているため骨折しやすいのですが、若い人でも高所から転落した場合や、交通事故などで強い外力が加わると起こります。前腕のもう一本の骨である尺骨の先端やその手前の部分が同時に折れる場合もあります。子供では橈骨遠位の骨端線と呼ばれる成長軟骨板の骨折が多く見られます。

診断と治療

創外固定器による治療と掌側ロッキングプレートによる治療X線(レントゲン)検査で確認します。骨折の仕方で治療法が異なるのでレントゲン像で不安定なタイプや関節面に骨折が及ぶような場合はCT検査を追加してさらに詳細に検討します。治療は先ず、局所または腕の麻酔下に整復操作を行ないます。整復後安定している場合は、そのままギプスやギプスシーネで固定します。固定期間は通常4週間程度で、その後リハビリテーションが必要となります。整復しても骨折部が不安定な場合または緩めると骨片がずれて来るもの、手首の関節に面する骨片の一部がずれたままで整復出来ないものは手術が必要になります。

当初は安定していてギプス固定したものの1週間以内に再転位をきたす場合も手術が必要です。手術は骨折の仕方によって手技が異なります。X線で透視しながら、鋼線を刺入して骨折部を固定する経皮鋼線刺入法や手前の骨片と手首側の骨片にピンを刺入してそれに牽引装置を取り付ける創外固定法と、骨折部を直接開けて骨片を整復してプレート固定する方法があります。ネジとプレートがかみ合う「ロッキングプレート」が開発されてからは、プレートで固定して、早くから手関節を動かせる方法がよく用いられるようになっています。手術後の固定期間は骨質や骨折の仕方により変動しますが術後2、3日から2週間程度で可動域訓練を開始します。子供の骨折は、骨片の整復が不完全でも自家矯正力が旺盛で、骨の癒合も早いので通常手術を必要としません。

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関節リウマチによる手関節、手指変形

症状と治療方針

関節リウマチでは高頻度に手指、手関節の関節炎を伴います。リウマチに対する治療や診断技術は日進月歩であり、新しい薬が次々に登場しています。最近は発症早期に治療を開始すれば関節炎も比較的コントロールしやすく、結果的に関節の変形を予防することも可能となっています。しかしながら現時点では一度変形してしまった関節を発症前の状態に戻せるような薬はありません。したがってリウマチにより変形してしまった手に対しては外科的な治療が中心となります。
手の機能を考える際に、物をつかむ、つまむなどの把持機能、そしてボタンをかけるなどの巧緻運動機能があり、それらの機能をできるだけ回復させるため治療の優先項位があり、まず手関節の機能再建が必須です。次に母指の機能、(CM関節+MP関節、IP関節)、次に示指から小指のMP関節、PIP関節の項になります。患者さまそれぞれで関節破壊部位と機能障害の程度が大きく異なるため、それぞれの症状に応じた術式の選択が必要となります。

手関節の手術

手関節症で行われる形成術とリウマチ性手指変形に対しての人工関節置換術

手の腫れや痛みが持続して、骨破壊がない例では滑膜切除術が行われます。ある程度関節破壊が見られる場合、特に尺骨の先端が背側に亜脱臼している場合(遠位橈尺関節の不安定性がみられる場合)には手が回しにくくなるために尺骨頭を切除するか、関節を形成する手術を追加します。関節破壊が進行した場合は手関節の部分固定術や全固定術が選択されます。手関節炎が進行すると手指を伸ばすための伸筋腱断裂を起こして指が伸ばせなくなる場合があります。その際には、腱移植や腱移行術を併用します。また手のひらから指先のしびれが強いなどの神経症状や手指が曲げにくいなどの症状が見られる場合は手のひら側の滑膜切除に加え、神経の剥離術を行います。

手指の手術

関節炎による腫れや痛みが中心で関節の変形が軽度の場合は、滑膜切除術を行います。靭帯や関節包といわれる関節の支持組織が緩んでいる場合はそれらを縫縮したり、支持性を得るために軟部組織の形成術を行います。関節破壊が高度で著しい変形や脱臼が見られる場合はシリコンや生体親和性のチタン合金でできた人工関節による関節置換術が行われます。一方で安定性を重視する目的で関節固定術を行う場合があります。関節固定術は特に母指で関節破壊の強い例に適応されます。

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